佐々木英雄法律事務所

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その1

 依頼者Ⅹ運転車が、平成14年12月の夕刻、路外駐車場から車道に進入して右折進行した際、右方道路から進行してきたY運転車と衝突し、Ⅹは肋骨骨折等の傷害を負い、平成16年に、Ⅹ、Y双方が訴えを提起し、Ⅹは、「駐車場から道路に出て右折進行した時、Y車が自車線に進入してきて自車右側面に衝突した。」旨、Yは、「自車が直進中、Ⅹ車が路外から前方路上に出て来たので急制動したが衝突した。」旨、それぞれ主張して争い、平成21年3月、「ⅩはYに39万円を支払え。」とのⅩ敗訴の一審判決が出た。
 私は、判決直前にⅩから依頼され控訴審を担当した。
 本件での最重要な争点は、衝突地点が、Ⅹ車が右折後進行していた車線上か、Y車の進行車線上かという点であるが、一審裁判記録を見ると、Ⅹの弁護士は、争点について見るべき主張・立証を全くしないで辞任し、その後判決までの2年間、鮮魚仲介人Ⅹが本人訴訟を行ったもので、敗訴するのも当然であった。
 私は、受任後、事故現場の実況見分を行い、廃車置場にあったⅩ車の衝突による損傷部位の測定と写真撮影をしたり、鑑定人に鑑定依頼するなどした。
 私は、これら調査結果を基に、控訴審において、
 ・Y車の損傷部位は右方向指示器部分だけに極めて限定されていること、及び、Ⅹ車の損傷部位は右側面中央の荷台煽とその下部であり、荷台煽には、押込擦過状で左後方に向け約30度の凹損が生じていることから、衝突の態様はⅩ供述のとおり、Y車右前部がⅩ車の右前方からⅩ車の右側面に衝突したものであること、
 ・実況見分調書の写真を子細に見ると衝突後Y車の対向車線に停止したⅩ車の直近前方路上にY車の方向指示器のガラス破片と認められる破片が散乱していることなどから衝突地点は、Y車の対向車線であること
などを主張し、控訴審は、平成21年11月、YはⅩに597万円を支払えとの判決を言渡し、確定した。
 この裁判を見ると、一審の審理に5年もの長期を要し、その間Ⅹの代理人弁護士はなすべき調査も主張・立証もせずに辞任するという無責任さで、当然一審の判決内容は客観的事実に反していて到底認め難いものでしたが、未だにこのような事件で困っている人がいるのです。

その2

 本件は、依頼者Ⅹ運転車がスーパーの駐車場から車道に進出して左折進行するに当たり、右方から直進してきたY運転の自動二輪車に気付かず、同車に自車右後部を衝突・転倒滑走させてYに全治迄1年を要する骨盤骨折、多傷性クモ膜下出血等の傷害を負わせる交通事故を起こしたのに救護・報告しなかったという業務上過失傷害と轢き逃げの事案である。
 本件では、Ⅹが右方の安全確認不十分のためY車と衝突した事実は明らかで、問題は、Ⅹが衝突の事実を知りながら救助せず逃走したかどうかの点です。
 Ⅹは数時間後に逮捕、勾留され、終始一貫して「車道に進出する時右後部に衝撃を感じたが、右後輪が縁石から段差のある車道に降りた時の衝撃だと思っただけで、まさか二輪車と衝突したとは知らず、そのまま左折進行した。だから、轢き逃げをする気持は全くなかった。」旨弁解していた。
 しかし、取調べの警察官・検察官は、轢き逃げは明白であるとして、衝突事故を起こしたことを知った筈だと厳しく追及していた。
 本件事故は12月初旬であり、もし、轢き逃げ事実を否認のまま公判請求されれば保釈は到底認められず、実刑の可能性があり、仕事も解雇されるという悲惨な結果を招くことになる。
 そこで調査したところ、
 ・Ⅹ車は、車体寸法(全長×全幅×全高)が4805×1960×1930(mm)、重量2,140kg、左ハンドルであるが、本件衝突による損傷は、右側面ドアの下部に取り付けてあった合成樹脂製のガーニッシュが現場に剥脱されただけで、金属製の車体部分に損傷は全くないこと、
 ・Y車は、右に転倒する寸前まで傾いた状態でその前輪がⅩ車のガーニッシュと接触後急角度で右前方に転倒滑走し、対向車線に停止した車両と衝突したこと、
などが明らかになった。
 そこで、私は、担当検察官に対し、「Y車が右に転倒する寸前の状態でその前輪タイヤがⅩ車のガーニッシュに接触しただけで、接触の衝撃は極めて軽微であるから、Ⅹが、右後輪が縁石を降りた衝撃と察したと弁解しているのは真実であって決して否認ではない。」旨を詳細に記載した上申書を提出した。
 その結果、Ⅹは、自動車運転過失傷害の罪だけで公判請求された後直ちに保釈され、執行猶予の判決を受けて職場に復帰した。

その3

 本件は、依頼者Ⅹ運転の普通貨物自動車が信号交差点を時速30kmで直進した際、左方道路から同交差点に時速10kmで進入してきたY1運転の軽四輪車前部に自車左後部を衝突させ、Y1及び同乗者Y2に軽傷を負わせたという事案で、Ⅹは「この道路は仕事で通っているので信号交差点であることは知っており、当然青信号に従って進行したと思うが、どの辺りで信号を確認したかなど具体的なことは覚えていない。」旨供述しているのに対し、Y1、Y2は、「右方からⅩ車が来るのを認めたが、対面信号が青色なので交差点に進入したら衝突した。」旨供述していた。
 取調べの警察官・検察官は、Ⅹに対し、「Y1、Y2の2人が青信号だと述べているからⅩの信号無視は明らかだ。」と言い、検察官は「罰金50万円で略式起訴予定である。」旨を告げていた。
 しかし、Y1、Y2の供述には重大な疑問点があった。
 即ち、仮りにY1が右方道路からⅩ車が時速30kmで接近してくるのを認めたのであれば、そのまま交差点に進入すれば、Ⅹ車と衝突し、Y1、Y2の命にかかわる重大事故の危険が大きいので停止した筈であること、及び、Y1車は、Ⅹ車の左後部に衝突したことを考慮すれば、Y1は交差点に進入するに当たり、対面信号を確認せず、かつ、右方道路の安全も確認しなかった疑いが濃厚であった。
 更に、交差点のⅩ車の進行方向左前方角がスーパーの敷地で、道路沿いが駐車場となっていてその奥に店舗があり、店舗には、交差点の信号機が写る位置に防犯ビデオカメラが設置してあることが判明したので、同店に赴いたところ、店長は、「事故直後、警察官に防犯カメラを調べたらどうかと申出たところ、警察官は店長と共に本件事故発生時を撮影した画面を確認したが、ビデオテープの任意提出を求めずに帰ったため、その画面は既に消去された。」旨説明した。
 そこで、モニターを見ると本件交差点の信号機が映っており、モニターの「ズーム」ボタンで拡大し「明るさ」ボタンで鮮明にする操作をしたところ、信号の色を十分特定・確認できた。
 警察官が本件時のビデオテープの任意提出を受けなかった真の理由は不明であるが、もし、任意提出を受けていれば、本件時信号無視をしたのが、Ⅹ、Yいずれであるかの客観的で確実な証拠を確保することが出来たのである。
 これらの調査結果を踏まえ、私は、担当検察官に対し、「本件は、信号機の表示の特定によってⅩ及びY1の過失の有無を客観的に判断すべき事案であるのに、警察はビデオテープという物的・客観的証拠の収集を怠ったために供述証拠だけで判断せざるを得ないこと、Ⅹ車が時速30kmで本件交差点に接近中であるからY1車が交差点に進入すれば衝突事故発生が自明であるのに、敢えて、時速10kmで進入した旨のY1、Y2の供述は、到底常識では考えられない不自然なものであって信用できず、かつ、本件衝突態様から、Y1は、対面信号を確認せず、右方道路から接近中のⅩ車に気付かぬまま交差点に進入したものと認められることなどの理由により、本件は不起訴処分相当である。」旨記載した上申書を提出したところ、Ⅹは不起訴となった。

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